Ⅰ 概要 2023年6月1日~2024年5月31日
協会立ち上げから5年という節目を迎え、水族館相互の交流を深め飼育技術の向上や若手の人材育成推進という、水族館業界内に関する事業の充実と定着が浸透してまいりました。そこでこれからは、一般の皆様が求める時代に即して多様化するニーズに応えるため日々尽力する水族館のリアルな姿を正しく認知いただき、地域コミュニティーの中核拠点として将来に亘り継続して水族館を愛し親しむファンを増やすという、外部への訴求事業に注力してまいる所存です。
そのため、今年度はCSR活動推進委員会を新設して準備を進めてまいりました。その中で、漁網リサイクル活動を推進している団体や企業との協働がはじまり、その活動資金として賛助会員様のご協力で本協会監修のグッズ販売を原資として寄付をいただくことも決まりました。このように、様々な新しい連携が生まれています。
また、2024年1月1日に発生した令和6年能登半島地震により、正会員であるのとじま水族館が甚大な被害を受けました。被災されました皆様には心よりお見舞い申し上げます。
本協会は、公益社団法人日本動物園水族館協会(以下、JAZA)と協力し、被災した生物避難や物資提供を行うと共に、新たに災害時会員支援規程を設け施行して今後の対応策を整備しました。併せて、広く一般の皆様に、のとじま水族館の現状と水族館相互の連携を広く正しく知っていただくことを目的として、クラウドファンディングによる支援金調達を行いました。この施策により、2,653人の個人および団体様より総額3,138万円のご支援をいただき、また様々な媒体で紹介されたことで本協会の活動を多くの皆様に知っていただくことにもつながりました。
さらに、JAZAとは「希少野生動物の保全に関する包括連携協定書」を締結し、必要な種の保全・登録・繁殖等において協働する準備が整いました。その対応窓口として、長期飼育・繁殖推進委員会を新体制のもとで次年度より活動を行ってまいります。
Ⅱ 各委員会等の活動報告
トレーニングセミナー実行委員会
①「JAA第4回トレーニング勉強会」の開催(オンライン)
開催日:2023年9月26日(火)
出席者:68名(34施設)
内 容:事例報告1 九十九島水族館海きららにおけるバンドウイルカ飼育の問題点
西海国立公園九十九島水族館
事例報告2 問題行動の解析と改善へのアプローチ
アクアワールド茨城県大洗水族館
②「JAA第4回トレーニングセミナー」の開催
開催日:2023年11月9日(木)~11月10日(金)
出席者:88名(39施設)
内 容:
第1部 講演
講演1 トレーニングと動物福祉(鴨川シーワールド)
講演2 トレーニングの基礎「ステイショニングと弁別・弁別刺激」(下関市立しものせき水族館)
パネルディスカッション(講演2題について)
第2部 トレーニングセミナー実行委員会アンケート報告
報告1 飼育動物のトレーニング内容(新江ノ島水族館)
第3部 口頭発表
発表1 ハンドウイルカにおける嘔吐行動の合図化による誤飲した異物の回収について(いおワールドかごしま水族館)
発表2 イルカとの新しい関係性の構築について(四国水族館)
発表3 カリフォルニアアシカにおける無給餌ショーの試みについて(下田海中水族館)
発表4 セイウチにおける反復行動の形成(鳥羽水族館)
発表5 オタリアの無保定下での口腔内針生検処置のためのトレーニング(新江ノ島水族館)
発表6 カリフォルニアアシカの自発的な吸引による麻酔導入(下関市立しものせき水族館)
第4部 鯨類長期飼育・繁殖推進委員会アンケート報告
報告2 鯨類の長期飼育に関するアンケート報告(神戸須磨シーワールド)
報告3 鯨類の繁殖に関するアンケート報告(名古屋港水族館)
第5部 講演
講演3 名古屋港水族館の鯨類飼育(名古屋港水族館)
第6部 フリー討論
議題1 鰭脚類の毎日の健康チェック
議題2 摂餌意欲の低いカマイルカへのハズバンダリー
議題3 発情期により摂餌欲求が極端に低下したカリフォルニアアシカへのアプローチ
議題4 トドの子獣の餌遊びの原因解明
議題5 シロイルカの移動トレーニング
議題6 鯨類・鰭脚類へのおもちゃの導入、また導入に向けたトレーニング
議題7 鯨類・鰭脚類の遊び道具について
議題8 イルカ科鯨類の精液採取トレーニングにおけるペニス露出までの過程
議題9 動物の担当制
水族館研究会実行委員会
「JAA第4回水族館研究会」の開催
開催日:2024年3月12日(火)~13日(水)
参 加 者:53施設112名(正会員69、賛助会員25、個人会員6、非会員8、協会4)
発 表 数:口頭発表15題、ポスター発表16題
基調講演:「大学での研究と水族館での飼育展示」(北里大学海洋生命科学部教授 三宅 裕志氏)
① 口頭発表
発表1 四国水族館に於けるWebチケットの導入について(四国水族館)
発表2 四国水族館におけるマダライルカの飼育について(四国水族館)
発表3 ナルトビエイの捕獲と長期飼育における餌料について(宮島水族館)
発表4 富山県内における条件付特定外来生物(魚津水族館)
発表5 飼育下におけるイエローリップダムゼルの繁殖(四国水族館)
発表6 アマノガワテンジクダイの人工保育による繁殖事例(マクセル アクアパーク品川)
発表7 ウミガラスの人工育雛の一例(新潟市水族館 マリンピア日本海)
発表8 サクラダンゴウオの繁殖について(上越市立水族博物館)
発表9 ゴマフアザラシの数量認知について(マクセル アクアパーク品川)
発表10 メコンオオナマズから学んだ長期観察の重要性(世界淡水魚園水族館)
発表11 飼育下カマイルカの鳴き交わし音に関する研究(伊豆・三津シーパラダイス,東京海洋大学 )
発表12 急性膵炎を疑ったハンドウイルカの治療の一例(淡路じゃのひれドルフィンファーム,鹿児島大学共同獣医学部臨床病理学分野、石原産業株式会社,日本大学生物資源科学部獣医衛生学研究室)
発表13 水族館における魚類の死因特定について(新江ノ島水族館)
発表14 エゾサンショウウオ幼形成熟個体の飼育経過と今後について(世界淡水魚園水族館,ふじのくに地球環境史ミュージアム,北海道大学)
発表15 シロウオの稚魚育成における生残率と成長曲線の向上について(宮島水族館)
② ポスター発表
発表1 ダンゴウオの産卵周期について(下田海中水族館)
発表2 飼育下でのTragulichthys jaculiferusの繁殖(下関市立しものせき水族館)
発表3 マダライルカ繁殖1例から得られた知見(太地町立くじらの博物館, 三重大学大学院生物資源学研究科)
発表4 寄生虫を完全駆除するハーブの飼料原料に関する研究について(株式会社キョーリン)
発表5 フンボルトペンギンの血圧測定方法の検討(下関市立しものせき水族館)
発表6 環形動物による水槽漏水の事例報告(下関市立しものせき水族館)
発表7 水族館における課題解決のためのデジタルソリューション(株式会社丹青社)
発表8 海プラスSOU(NPO法人)と共同でのアマモ場再生の取り組み(伊豆・三津シーパラダイス)
発表9 DAIWAが切り拓く“環境と調和する新しい時代の価値”(株式会社カイタックトレーディング)
発表10 伊勢湾最湾奥に位置する名古屋港ガーデンふ頭で採集された魚類(名古屋港水族館)
発表11 伊豆半島における造礁サンゴ類調査の取り組み(新江ノ島水族館,下田海中水族館,筑波大学)
発表12 相模川支流串川における水棲動物相の把握とその展示(相模川ふれあい科学館)
発表13 3Dプリンタによる「いきもの目線カメラ」の製作について(株式会社アルファ企画)
発表14 鶴岡市浄化センターの養殖アユ展示について(鶴岡市立加茂水族館,鶴岡市上下水道部下水道課浄化センター)
発表15 ライブコーラル水槽の照明更新(LED化)について(名古屋港水族館)
発表16 動物園予備校アニマルキーパーズカレッジにおける教育の取り組み(動物園予備校アニマルキーパーズカレッジ)
魚類繁殖委員会
① 実施種と担当施設
(1) コンペイトウ(担当:越前松島水族館、新江ノ島水族館)
(2) アマノガワテンジクダイ(担当:しものせき水族館、伊豆・三津シーパラダイス)
(3) クマノミ(担当:横浜・八景島シーパラダイス、伊豆・三津シーパラダイス)
2023年6月に中間報告をまとめ、2024年3月に種別繁殖計画書を作成して現状分析及び課題抽出を行いました。
② プレスリリース
委員会で繁殖に取り組んだコンペイトウが2023年1月に新江ノ島水族館、続いて2月 越前松島水族館で孵化に至り、その稚魚・幼魚を両館併せて700尾以上育成できたことから、2023年8月10日に「日本水族館協会初!水族館同士の連携から生まれたコンペイトウ」と題してプレスリリースを発信しました。